―第2話―


―――ドンドン
何かの叩き音が聞こえる―――

―――ドンドコドンドン
太鼓…太鼓のような音がする。

「お母さーん!! 早く早くー!!」

…誰だ。
俺だ……小さい頃の……。

「お母さん……お母さーーーーーん!!!」

―――叫ぶな……叫ぶな!!



「うわあああ! ……はっ……はぁ……はぁ……ゆ……夢……」

叫びと共に目が覚め、ベットから思い切り起き上がる。
今、小さい頃の自分を見ていたのは…悠里。
彼は夢を見ていたのだ……。
とても魘され、体中は汗でびっしょりと濡れている。
悠里はベットから起き上がった状態で額を手で抑える。
手にはだんだん力が入っていくのがわかる。

「何度見ればいいんだよ……こんな夢……」

そう口に出せばベットから立ち上がる。
起き上がった彼の服装はパンク系といわれる服装。
そう…昨日悠里は緑目の彼と出会って帰ってからすぐに家へ行き、ベットへ向かいそのまま寝てしまっていた。
汗だくの服装のまま新しい服を持ち風呂場へと向かう。
そして、上半身の服を脱ぎ、

「気持ち悪ィ……何でまたこの夢を……」

そう途中まで口にすると悠里の頭の中でこの言葉が走る。

【黒城…悠里君…だったかな?】

昨日出あった緑目の台詞。
思い出しながらまた頭を右手で抑える悠里。

「何なんだよ……あいつ……つか、何でこの夢からあいつの事思い出してんだよ……俺……。
 あー……クソ……うざってぇな!!」

そう叫びながら悠里は脱いだ上半身の服を思い切り下へと叩きつける。
”はぁ…はぁ…”と息を切らす。
呼吸が落ち着いた所で少し下に俯きその場に座り込む。

「クソ……」

そう口にすれば立ち上がり全ての服を脱ぎ捨てお風呂場へと入って行く。
こうして、今日が始まる。

”ガラッ”
ドアの開く音がする。
悠里がお風呂から上がった様子。
体を拭き、先ほど持ってきた服を着始める。
その服もやはり黒と赤のパンク系の服。
服を着終わり自分の部屋へと足を進める。
部屋へと進んでいると、途中で”カタン”と音が玄関で響く。
少し眉間に皺を寄せ面倒臭そうに玄関へと向きを変え足を進める。
そうすると、そこには小柄な少年…琉兎が玄関の中に居て悠里に笑顔を向けている。
それに対し悠里は不機嫌な顔をし、小さく口を開ける。

「不法侵入…。出てけ」

そう口にすれば琉兎はクスクスと笑いを零す。
その笑顔のまま琉兎も同じように口を開き

「不法侵入とは失礼だなぁー。んーと、黒壌悠里君!迎えに来たよ」

そう口にし、悠里の腕を掴む琉兎。
しかし、悠里は琉兎の事を知っているわけもなく不機嫌な顔のまま相手を見て、腕を振り解く。
今回は驚いた表情は出ていない。
そして、その表情のまま

「誰お前…。つか、出てけよ」

そう口にすれば琉兎は軽く首を傾げる。
そして琉兎は悠里に尋ねるように口を開く。

「昨日会ったじゃん!覚えてないの?それと何で名前を知っているかとか気にならないの?」

そう琉兎が言う事に軽くため息をついて見せる悠里。
悠里は玄関の方に指を指す。

「…表札あんだろ」

そう言えば閃いたように右手で左手をポンと叩く納得した仕草を見せる琉兎。
琉兎がそうするとため息をつく悠里。
そうして悠里は不機嫌そうに

「お前の遊びに付き合う程暇じゃねえんだ。さっさと出てけっつの」

悠里は軽く玄関を指差しそう言い終わると部屋の方へと足を進めるため、玄関と反対の方向へと足を進める。
その行動を見た琉兎は悠里の背中を見つめながら

「そっか…。そう言えば君、昨日緑色の目の髪の長い人に会った?」

そう口にする琉兎に対し悠里は足を止める。
琉兎はそのまま口を開く

「君は昨日彼の言った事で何かひっかかってる…違う?」

そこまで口にする琉兎のもとに戻り悠里は相手の口もとを掴む。
その顔は緊迫で…。
その表情のまま悠里は静に口を開く。

「黙れ。女だからって容赦しねぇぞ…。さっさと出て行け」

悠里は琉兎の事を女の子だと勘違いをしている様子。
そして、琉兎は焦った表情も見せずそのまま笑顔を見せる。
そして笑顔から真剣な表情を悠里に向け

「何で隠すの? 何で強がるの? 僕は君の本当の姿を見にきた。そして…君を助けに…」

琉兎は、悠里にこう言葉を言う。
悠里は意味がわから無そうに琉兎に対し”はっ”と笑いを零す悠里。
そこから軽く笑いながら琉兎を見て口を開く。

「意味がわからねえな。俺は確かにあいつが何で名前を知っているかとかは気になっていたが、
 強がった覚えはねぇし、助けて貰うような事もねえよ」

そういう悠里に対し琉兎は首を横に振る。
琉兎は真剣な表情のまま悠里を見る。
そうして、小さく口を開く。

「もし、君の心の中が僕につつぬけだったとしたらどうする?」

そう口にする琉兎に対し悠里は”ふっ”と笑いを零す。
悠里が心の底で思った事…

―――んなもん信じるわけねえだろ

そう悠里が心で言い終わり、口に出そうとすると、琉兎の口が開く。

「やっぱ、信じないよね。でも、今の僕の返答で信じてもらえるかな…?」

琉兎がそう口にし、驚き面を隠せずにいる悠里。
しかし、また軽く笑い、悠里は口を開けた瞬間、琉兎も同じように口を開ける。

「そんなんで俺が信じると思って…」

そう悠里が言いかけている時に琉兎の口が開く。

「思ってるよ…実際に君は少し信じかけてるはずだよ」

言葉とは、まず自分の心の中で考えてから口に出すもの。
琉兎はその瞬間的に悠里の心の中の言葉に返答したと言う。
悠里はさらに驚いた表情をし、琉兎を見る。

―――何だ…こいつ…気持ち悪い

琉兎は悠里がそんな事を考えた時に少し寂しそうな顔をして

「気持ち悪い…か。落ち込んじゃうよ…? で…信じるの?」

そう口にする琉兎に対し悠里は驚きの表情から恐怖を感じ始めた表情へと変わる。
琉兎はそんな悠里を見て寂しそうな表情から笑顔へと変える。
そして、琉兎は悠里の腕を掴む。
しかし、それに対し悠里は腕をふりほどかないまま俯き悠里は口を開く。

「何で俺の考えてる事がわかんだよ…お前馬路でなんなんだよ…」

そう口にする悠里に対し琉兎は笑顔を向ける。
そうして、笑顔のまま悠里を見て

「知りたい? だったら僕についてきてよ!そしたら、何でも教えてあげるから」

そう口にする琉兎に対し、今まで相手について行くのを嫌がっていた悠里も靴を履き始める。
琉兎はその行動を見てクスッと笑いドアの方へと足を進める。
そして、琉兎はドアと口を同時に開く。

「行こっか!」

そう口にする琉兎に対しその言葉を受け取る悠里。
悠里の考えてる事は琉兎につつぬけな事に気づき口を開かない。
そうして、悠里は靴を履き終わり琉兎と一緒に家の外へと歩き出す。


From the painful