―第5話―


―――。

光に包まれ目を閉じた3人。
眩しさも無くなり、目を閉じながらも周りが暗い事に気づく悠里。
悠里はそのままそっと目を開け、思わず驚きを隠せない表情をしながら回りを見回す。
そう…周りの風景は、まだ明るかった公園では無く、まるで墓場のような風景だった。
色に例えるなら、【黒】。
その風景に驚きながらもまだ周りを見回しつづける。
そんな悠里に、琉兎は顔を向け

「大丈夫? 少し気分が悪くなったりしたら教えてね?」

―――気分が悪くなったら…。

この言葉を少し気にする悠里。
そんな悠里を遮るように、少し離れた所…100メートル程だろうか。
そのあたりに白い光が光っている。
数秒光ったかと思えば、また消え、消えたかと思ったらまた光る。
綺麗な真っ白い光…。
先ほど居た公園から、此方へ来る時に光った様な光。
その光と共に、どす黒い闇のような煙のような物も見える。
その方向を悠里が見つめていると、魅玲と琉兎も其方を向き始め

「あっちだね…。 行こう!」

そう真剣な表情で琉兎が口にすれば、魅玲は頷いて見せ駆け出す。
琉兎も同じく駆け出そうとするが、悠里の方を振り向き、真剣にも関わらず安心させるように笑顔を向け

「僕が守ってあげるから…。 今何をすれば良いかとか、全然わからないと思う…
 でも…ちゃんと後でしっかり説明するから…。 僕を信じて。」

―――信じて。

この言葉に対し、飲み込まれた様子の悠里。
悠里は、何を考えれば良いかなどが、わからなくなり、だんだんと無心化してきていた。
何を考えても、結果はまだ出ない。
そう考えた悠里の精神が、無心にしたのだろう。
そして、琉兎は悠里の手を取り、いつもなら嫌がる悠里もその手を握り返す。
そのまま魅玲を追うように2人も一緒に駆け出す。

―――タッタッタッタッ…ザッ

100メートル程を琉兎は悠里の手を引きながら走りきり、目指していた場所へついた。
…その場は想像し難い場であった。
茶色髪でポニンテールの様な青年が、身の丈ほどの長剣を持ち、真っ黒い物体をきりつけている。
黒い物体はまるで…人間の様な形をしている。
もはや、人間に目や口が無くなり、ただ黒くなっただけのような…。
だが、それをいくら茶髪のポニンテールが切りつけても、切れてはいない。
悠里はただただそれを、信じられない様子で見ているだけ。
それに気づいたポニンテールの青年は戦いから逃げるように琉兎と悠里の元へ走って来た。
その黒い物体とは、先ほど公園から消えた金髪の少年の修羅と青い猫毛の様に髪がはねた少年が2人で銃を向けて戦っている。
悠里は、そのままその戦っている少年達から視線を此方に向かってきたポニンテールの青年に向ける。
そのポニンテールの青年は、悠里よりも先に琉兎の方へと視線を向けて口を開く。

「コイツが、あんはんの言っとった悠里って奴か?」

琉兎は悠里の話をしていたらしく、そう問いかけてきた。
その質問に首を縦に振る琉兎。
そのままそのポニンテールの青年は、悠里に視線を変えジロジロと見始める。
ジロジロと見られ、少し不機嫌な様子を見せ、悠里は

「人の事ジロジロ見てんじゃねえよ」

そう悠里が言うと、その言葉にポニンテールの青年は少し唖然とした表情を見せる。
しかし、その表情も一瞬にして消え、ハハッと笑みを零す。
その態度に悠里も更に機嫌悪そうにするが、それに気づきポニンテールの青年は
「あー、悪い悪いw 別に嫌がらせなわけと違うんやで? あー、俺は斉賀旭やw よろしゅうなw」

そう、笑いながらも挨拶をする彼の名は【斉賀旭】だった様だ。
それに対し、機嫌を直そうとはしない悠里。
そんな挨拶が終わった瞬間に、先ほどから黒い物体と戦っていた方向から

――――ザシュッ

と何かが裂けた音が鳴った。
その音に驚き、3人は思わず其方の方を向く。
其方を見て見ると、修羅が右腕を怪我していて、血が流れ出ている。
それを見て、走って修羅の元へ走る琉兎。
修羅は、腕の痛みでその場を動けずにいて、一緒に戦っていた青い髪の少年が修羅を守りながら戦っている。
琉兎は、修羅の元へ着くと、ゆっくりとしゃがみこみ、相手の腕を取る。
痛みに耐えながらも、腕を差し出す修羅。
修羅の怪我した腕を左手で支えながら、自分の右手をそっと見つめる琉兎。

―――ポワワ

その様な優しい光が琉兎の右腕の上で光る。
綺麗な光というよりも優しい光。
その光を、怪我した腕に当てている。
その腕は、ゆっくりでは有るがみるみると怪我がふさがっている…。
怪我は、いつのまにか消えた…。
だが、その治してもらった修羅の表情は少し曇っていた…。
琉兎はその場から立ち上がる。

―――治癒。

これが琉兎の能力のうちの1つ。

―――能力。

これは彼にとっての大きな武器。
だが、この力を使ってもらった修羅は、何故表情が曇ったのか。

その理由もこれから。



From the painful